防衛省は10日、航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが墜落したと発表しました。
機体の消息不明から一夜明け、その原因が機体の墜落と断定されました。
今回は墜落に至る原因、捜索状況など、詳しく調べてみました。
事故の概要
航空自衛隊は9日、最新鋭ステルス戦闘機F35Aが、航空自衛隊三沢基地の東の太平洋上空でレーダーから消えたと発表しました。
消息を絶ったのは、航空自衛隊三沢基地の第3航空団第302飛行隊に所属するF35Aでした。
操縦を務めていたのは40代の3等空佐で、9日午後7時ごろ、夜間戦闘訓練のため他の3機とともに三沢基地を離陸しました。
約25分後に基地の東約135キロの太平洋上で、通信もなく突如レーダーから消えたことから、周辺を航空自衛隊の捜索・救助部隊11機と海上自衛隊の艦艇4隻、航空機3機などが捜索していました。
午後9時45分過ぎに海上で浮遊物を確認し、破片を調査した結果、F35Aのものだと分かりました。
離陸から墜落までの詳細
墜落したF35は9日午後6時59分に三沢基地を離陸。
この日の訓練は対戦闘機戦訓練で、「ACM」と呼ばれていました。
4機で行う訓練で、通常2対2などの組み合わせで敵・味方の役目を決めて行われます。
三沢基地から東に約135キロの現場空域までは10分ほどの距離でした。
離陸から約30分後にレーダーから消失し、その直前にパイロットの「Knock it off(ノック・イット・オフ=訓練を中止する)」という送信を最後に通信が途絶えました。
訓練の前半から中盤頃に何らかの異常があった可能性があり、座席ごと機外に脱出するベイルアウトしたのかも含め不明だといいます。
搭乗者
空自によると、事故機に搭乗していたのは第3航空団第302飛行隊所属の細見彰里(あきのり)3等空佐(41)で、氏名意外の情報はまだ公表されていません。
捜索活動が続くなかで、事故の社会的影響を考慮し、家族へ連絡した上で氏名が公表されたといいます。
パイロットは飛行時間約3200時間のベテランで、これまでのF35の飛行時間は約60時間ほど経験していました。
(写真は、空自初の女性戦闘機パイロット)
機体の特性からみる事故当日の訓練内容
F35は相手方のレーダー反射を抑えたステルス仕様で、さらに高度なセンサーを備える機体の特性から、敵より先に相手を探知し、目視できない有視界外(目で見て確認できる距離の外)から空対空ミサイルで相手を撃退できる機能を備えています。
ドッグファイトと呼ばれる近接空中戦、簡単にいうと追いかけっこのような戦い方は運用上、想定されていません。
事故当日は、お互いに目視できない距離で、かなり離れた位置で対戦闘機訓練をしていた可能性があります。
そのため相当に高度で難易度の高い訓練だったと岩屋防衛大臣も語っています。
機体の捜索にあの大型機も
捜索に参加する米軍の戦略爆撃機
空自によると、機体は水深約1500メートルに沈んでいるとのこと。
機体の引き揚げは難航が予想され、回収できたとしても、機体の部位によっては保全上、機密事項により公表されない可能性もあります。
米軍は三沢基地の哨戒機P8ポセイドンと横須賀基地のイージス艦「ステザム」を現場に派遣し、捜索に協力しています。
墜落現場付近にロシアや中国の飛行機や船が接近しないか警戒する目的もあるとみられています。
またこんな情報も。
USAF B-52H TASTE02 departed Andersen AFB, Guam to assist in the search for the missing #JASDF F35 near Misawa, Japan. pic.twitter.com/iY7T5YUg4t
— Aircraft Spots (@AircraftSpots) April 9, 2019
なんと戦略爆撃機が捜索に参加してきたのです。
グアムのアンダーセン基地からB-52爆撃機が事故現場海域に投入されました。
アメリカ軍は異例の協力態勢で捜索に臨んでいるとのことです。
過去にも機体に不具合が続いていた?
墜落した機体は、三菱重工業が組み立てた国内で製造された最初の機体です。
墜落機は2017年6月、県営名古屋空港を拠点とする試験飛行の際、冷却系統の部品の不具合があり緊急着陸していました。
その後、部品交換して7日後に再度、試験飛行しましたが異常はなく、2017年9月に航空自衛隊が受領し、米国でも性能確認試験をして、翌年5月28日に三沢基地に配備されました。
しかし昨年8月にも機材の不具合があり、天候も考慮して千歳基地に緊急着陸したといいます。
機体番号は「79-8705」契約時の調達額は約140億円でした。
防衛省は度重なる不具合について、この度の墜落との関連については現段階でのコメントを差し控えるとしています。
終わりに
この度の事故においては、パイロットの方の安否が心配されますが、過去に不具合が続いていたことも気になるところではあります。
現在防衛省では事故との因果関係についてはコメントしていませんが、機体を回収して墜落の原因を突き止めない限り、可能性がゼロとは言い切れません。
兎にも角にも、一刻も早いパイロットの救出が望まれます。