経営不振にあえぐ大塚家具の大塚久美子社長は、日中越境ECを経営するハイラインズ株式会社と資本業務提携で合意しました。
3月4日、ハイラインズの陳海波社長と東京都内の日本外国特派員協会で会見に臨みました。
そんな大塚家具の大塚社長ですが、数年前には前会長の父との「親子喧嘩」も話題となりましたね。
今回は業務提携、そして経営を巡って親子で対立したことなど、様々掘り下げて行こうと思います。
業務提携の狙い
この度の業務提携を機に、大塚家具が構想を練っているのは大きく二つ。
一つは中国での高級家具の店舗販売。もう一つはEC市場の開拓です。
大塚社長は三点説明するとし、以下のよう述べています。
まずは業務提携の狙いについて、これまで大塚家具は、日本国内はもとよりヨーロッパ、アメリカ、アジアと、世界中から商品を仕入れて、日本の消費者に提供してきたと前置きをした上で、これからは世界の消費者に大塚家具の商品とサービスを提供していきたいとしました。
また国により、生活、文化、ライフスタイルが異なることに触れ、本当に求められる商品やサービスを提供するためには、その土地の文化やライフスタイルに通じたパートナーが必要になるとも述べています。
よって今回は、まず中国の客層に大塚家具の商品とサービスを届けるにあたって、イージーホームとハイラインズの協力を得て、業務提携による成果を楽しみにしているとしています。
まずは陳社長の出身国である中国を足がかりに、大塚家具の世界進出を図ろうというところでしょうか。
二点目は、ここまで赤字が続く大塚家具が、中国市場への参入と、インターネット活用における今後の見通しについてです。
多くの識者に共通する見解が、家具業界を取り巻く環境が急速に大きく変化しているということで一致していることを上げ、かつて住宅の需要が現在の2倍あり、ネットがなかった時代に成功したビジネスモデルをこれからの人口減少や、ネットがある社会に合わせて再構築する必要があるとしました。
これまでの大塚家具の施策では、新しいビジネスモデルの再構築のスピードが著しく落ちてしまっていたことを認め、今回の業務提携ではまず住宅需要が旺盛な中国での販売の可能性が開け、そしてインターネットと情報技術というところで強力なサポートが得られたとしました。
ここから業務スピードを上げ、新しいビジネスモデルやブランドイメージをつくっていきたいとしました。
つまり、インターネット販売を展開し、住宅建築の需要拡大が見込める中国市場に積極的に展開して、家具を売っていこうということです。
そして三点目は、前会長で父の勝久氏との共通点について語り、今後の動向を匂わせる回答もありました。
上場会社としての経営方針に相違があったが、家具に愛着を持って長く使う、そしていい家具を自分でも使いたいし提供していきたい、という価値観はまったく同じとし、勝久氏にはいつかそれを理解してもらえると信じているとしました。
社長自身、いいものを長く使うという価値観をもっと広げていくことが大事なのではないかと強く思っているそうで、同じ価値観を共有する作り手、販売業者が協力して、日本だけではなく世界にも広げていきたいと考えているそうです。
そのために協力していくための団体、あるいはグループがつくれないかと考えていて、実現したらぜひ勝久氏にも声を掛けようと思っているとしています。
このように、今後父・勝久氏との協力体制を再構築したい考えを発表しました。
記者会見、一問一答
記者会見では、赤字業績続きの大塚社長へ向け鋭い質問が飛び交いました。
決算業績3期連続と大きな赤字だが、いつまでこの会社を率いていくのかという経営責任について問われると、
とにかく、早期に会社の業績回復をすることが社長としての責任があるとし、最終責任は自分が負うが、出資してもらっている以上、早く成し遂げることが今年の目標としました。
今回の業務提携による業績回復に意気込みました。続いて、
これまで入りやすい店作り、脱高級路線を掲げてきたが、今後も続けていくのかという問いに対し、
大塚家具が『脱高級路線』を宣言したことは一度もなく、脱高級路線とか低価格化という、噂話が広がったことに困惑してきたと答えました。
ここ数年間、噂話が消えなかったこともブランドイメージを混乱させた要因の一つ。
それが大きな客離れの事態を招いているようです。
創業時から良い物を安くすることにこだわり、職人から直接買った物を直接販売してきたというのが大塚家具の歴史であり、良い商品と良いサービス、これを崩してしまったら大塚家具の存在価値がないと語っていました。
これまで国内でコンシェルジュサービスを行ってきたが、中国でもそのサービスを展開するのかという問いに、
サービスと商品作りが非常に難しく時間がかかり、人を育てていかなければできないことだが、これができれば他にはない独自の立場が作れると回答。
これまで同様、コンシェルジュサービスは続けていく意向を示しました。
合わせて、中国には世界中から物が集まる一方、日本の家具がほとんど入っていない現状から、中国市場の可能性に期待しているようです。
国内店舗の今後の見通しを問われると、
戦略として店舗再編を掲げてはいるが、ネットと実店舗の融合を進めるため、どのくらい修正するのかは検討中。店舗については縮小、出店、形を変えていくことは十分あり得ると回答しました。
業績回復のためには、今後閉店する店舗も出てくるでしょうね。
以上のように回答した大塚社長ですが、質問に対しての返答から察するに、全体的なビジョンは整っていて、なおかつその施策には自信があるように感じました。
ECとは
ここで一旦上記に登場する「EC」について、簡単に補足を入れておきます。
EC(electronic commerce)とは、「電子商取引」とも言われ、インターネット上での売買全般を意味します。
「インターネット通販」や「ネットショップ」といった言葉を総称したものがECであるとの認識でいいでしょう。
経営巡る親子喧嘩と、勝久氏の見解
前会長の勝久氏と大塚社長が経営方針をめぐって対立したのはもう5年前になります。
2014年7月には勝久氏が大塚社長を解任する事態に発展したのですが、半年後の2015年1月28日、取締役会で大塚社長が再び社長に返り咲くことになりました。
当時は勝久氏と大塚社長二人が代表権を持つ体制となっていて、営業本部は勝久氏が担当し、3月の株主総会の準備作業や経営計画の策定を大塚社長が担いました。
しかし二人は和解したわけではありませんでした。
大塚社長側が取締役会の多数派を掌握したことにより、株主総会で勝久氏は会長職を退任、大塚社長を中心とした新体制ができあがることになりました。
それから5年、今回の会見において、大塚社長が和解を臭わせていることについて勝久氏は、「大塚社長から連絡がない。何が言いたいのかわからない」とコメントしています。
あのYouTuberがお買い物!?
引用:http://news.livedoor.com
人気YouTuberのHIKAKINさんが2月28日、大塚家具で総額約800万円の家具を爆買いしたという動画を公開しました。
これを受けて、大塚社長はツイッターを約4ヶ月ぶりに更新し、
「ヒカキンさんに大塚家具をご利用いただきました。ありがとうございました!」「アフターメンテナンスもしっかり致しますので、何なりとお申し付けくださいませ」
と、喜びの声を上げていました。
このHIKAKIN効果もあり大塚家具の来店者数が一時的に倍増したようで、その影響力には驚かされます。
一方でHIKAKINさんが大塚家具からお金をもらい宣伝のために買い物をしたのではないかという、いわゆる「企業案件」だったのではないかという声も上がっていましたが、HIKAKINさん自信がそれを否定しています。
いずれにせよ低迷続きの大塚家具にとっては、今回のHIKAKINさんの爆買いは広告費をかけないすばらしい宣伝になりましたね。
まとめ
今回の会見を受け、筆者としてはまず騒動からの業績悪化に対し一石を投じる形になったことについては、大塚社長の攻めの姿勢を評価すべきと感じました。
さらに、父・勝久氏との和解も匂わせていることから、どのような心境の変化があったかはわかりませんが、以前のままでは会社として業績を伸ばせないと感じたのか、いずれにしても大塚社長は父・勝久氏ともう一度手を組み直そうと考えたのでしょうね。
これまで経営を共にしてきた二人ですから、関係の再構築により会社にもたらす利益はさらに大きくなることでしょう。
今後の二人の動向に注目ですね。